まさゆきのブランディング研究

ブランディング論を研究するまさゆきのブログ

「ポカリスエット」

大塚食品の製品にはロングヒット商品が多い気がする。

その一つがポカリスエットだ。

 

一瞬で「ポカリだ」と分かるパッケージがポカリスエットのブランド力を示している。

 

ポカリスエットの「青」

ベタな青と白の二色しか用いないことで、「青いスポーツドリンクと言えば、ポカリスエット」と言うほどの強烈なブランドイメージを作り上げている。

「赤いパッケージの飲み物と言えば、コカ・コーラ」というのと同様、商品に「単色のイメージ」を結びつけるのは非常に効果的だ。

 

パッケージをベタの真っ青にするからこそ、「青のイメージ」を我が物にできるのだ。

 

青の割合がもっと少なかったり、ベタの青ではなくグラデーションを入れてしまったり、少しでも他の色を入れてしまったりしたら、それだけで「青のイメージ」は薄まってしまっていただろう。

潔く、ベタの青を使ったからこそ、「青のイメージ」を独り占めできたのだ。

 

フォント・デザイン

はっきりとしたシンプルな英字フォント。

このフォントは「ポカリスエット=機能的飲料」というイメージに合致している。

「脱水症状を予防する」という「科学的機能」が一番の売りのドリンクだから、第一に機能的なイメージが必要なのだ。

だから「美味しそうなフォント」「スポーティなフォント」などではなく、意図的に「無機質なフォント」を使っている。

そうすることで「機能的飲料」というイメージを損ねることがない。

もしもっとクセのあるフォントを使っていたら、別のイメージが生じてしまい、「機能的飲料」というイメージは薄れていただろう。

これは類似する経口補水液OS-1」のフォントが無機質なフォントになっているのと同様だ。

 

ただ、ポカリスエットの場合はその「無機質なフォント」の下に波をイメージするデザインがあることで、完全無機質な経口補水液とは違う「爽やかさ」「潤い」を加味している。

このフォントとデザインが「脱水症状を予防する」という「科学的機能」と、「水よりもヒトの身体に近い水。」という「潤いのイメージ」を絶妙なバランスで表現しているのだ。

不変のデザイン

ポカリスエットはこのパッケージをずっと変えることなく使ってきた。

「長く変えることなく継続する」ということは、ブランディングにおいて最も重要と言えるほど重要だ。

「この商品は一貫した理念の下、作られてきた」という信頼感を与えることができる。

 

コロコロ何年か置きにパッケージを変えるような商品ではそうした「一貫性のイメージ」を与えることができない。

人でもコロコロと信念を変えてしまうような人では信用されにくい。

それと同じように、「変えないことによる一貫性」は商品において強い信頼感を与える効果を持つ。

 

統一感

ペットボトルでも、缶でも、粉でもパウチでも、全く同じパッケージデザインになっている。

この統一感は「ポカリスエットの世界観」を維持・強化し、決してぼやけさせない。

 

下の新しいリターナブル瓶ボトルも、その「ポカリスエット世界観」に見事に収まり、そして「ポカリスエット世界観」をさらに拡張する役割を担っている。

新しいリターナブル瓶ボトル

ペットボトルでも感でも、瓶でも、、、それぞれの商品が「ポカリスエットの世界観」を壊さないよう、ド真ん中を射抜くようにきちんと収まり、さらにラインナップの一員として「ポカリスエットの世界観」の拡張に寄与している。

この統一感を維持したラインナップが、ポカリスエットのブランドをさらに強力にしている。

 

電解質濃度の表示が「科学的機能」をイメージさせる

ポカリスエットの表示

ポカリスエットはスポーツドリンクだから、「ただのおいしい清涼飲料水」ではなく、「脱水症状を予防する」という「機能」が一番の売り、価値になっている。

 

だから、その「機能」を「イメージ」させるパッケージになっている。

具体的には、化学式Na+やCl-、濃度も(mEq/L)など、実際に科学の研究室で使われているような表現で記載しているのだ。

 

これは「何が入っているかを消費者に理解させる」という意図よりも、「科学的理論に基づいた製品であるという『イメージ』」を与える効果がある。

だからあえてカタカナではなく、研究室で使われているような学術的な表現で記載しているのだ。

ここで「ナトリウムイオン」「カリウムイオン」、、、とカタカナで表記してしまったら印象として「科学的イメージ」は弱まってしまうだろう。

 

「理解させるためのパッケージ」ではなく「イメージさせるためのパッケージ」という考え方は、パッケージデザインの中でも巧妙なテクニックだ。

 

一方で、美味しさを表現する表示がない。

これは美味しさを示す表示を入れた場合、「脱水症状を予防する」という「機能的飲料のイメージ」を弱めてしまうためだろう。

もし「~製法」「~の天然水を使用」など、「味に関するこだわり」を表示してしまったら、「機能的飲料のイメージ」はどうしてもぼやけてしまう。

 

「機能的飲料のイメージ」を強化するために、あえて他の要素を表示していないのだ。

CM・広告

ネット検索で「ポカリスエット 広告」と検索すると、ほとんど検索画面が青になる。

それだけ徹底して、意図的に「青のイメージ」を使っているということだ。

 

また、CMはほとんどの場合、海、水、プール、といった感じだ。

これは「水よりもヒトの身体に近い水。」という「潤いのイメージ」を徹底して表現するためだろう。

それから高校生、若者、といったイメージもある。

これは「若さが与える爽やかさ=青」というイメージ、そして「若さ=潤い」というイメージをポカリスエットに利用していると考えられる。

 

ポカリスエットのCMはポカリスエットが画面上になくても「なんとなくポカリスエットのCMっぽいな」と感じられたりする。

それほど、CMの雰囲気とポカリスエットがリンクしているということだ。

まとめ

ポカリスエットからは、「水よりもヒトの身体に近い水。」というコンセントに根ざした一貫性のあるこだわりを感じる。

こうした世界観の作り込み、世界観を維持・拡張していく一貫性のあるラインナップ作りがブランド力の根底にあると思われる。