「雪肌精」
スキンケアブランドの「雪肌精」。
最近のボトルやパッケージを見て、ブランディングに力を入れ始めたな、と感じた。
化粧品自体の品質はさておき、そう感じるのはボトルなどをはじめとしたデザインの印象が大きいのではないかと思う。
容器
上の写真が最新の雪肌精の容器だが、キャップの大きさがボトルの大きさと同じになっていることで一つのモノとして外見的にシンプルな形になっている。
また、よく見ると、容器の形は真円形ではなくやや歪んだような円形となっている。
これは「雪肌精が自然派化粧品である」というイメージを強化している。
これがもし一般的な真円形のキャップだったとしたら、歪んだ円形と比較するとなんとなく「人工感」を感じると思われる。
意図して歪んだ円形にすることで、植物の雫をイメージするような「ナチュラル感」を印象を付けている。
真円形をしているほとんどの容器は、どうしても「ありきたり感」が出る。
そうすると容器一つにとっても「違い」、「作り込み」を感じにくい。
容器メーカーのカタログにあるようなボトルを使っていては「こだわり」を感じさせるのは難しい。
その点、この雪肌精の造形はかなりのこだわりではないかと思う。
また、キャップなどはマット加工がされている。
マット加工がどんな印象を与えるかと言うと、同様に「ナチュラル感」を感じさせる。単に無加工のプラスチック容器では表面に光沢が出るため「いかにもプラスチック」という「人工感」が出やすい。
一方でマット加工は見た目・手触りともに、自然界にある石のような質感で「ナチュラル感」を感じやすい。
実際に触ってみると、無加工のプラスチックが指にピタッとくっつく感覚とは違い、指にサラッと触れる感覚があり、明らかに心地よい。
「ナチュラル感」を押し出す化粧品では、こうした容器の質感へのこだわりも一つの要素となる。
ボトルとキャップ、全体の構成を見てもブランディングの強化を意図したデザインが感じられる。
以前のボトルはありきたりな造形のボトル・キャップとなっている。
「青のボトルに白いキャップ」という2つの、造形的にも一体性のないパーツで構成されているため、どうしても「人工物」という印象をもってしまう。
最新のボトルが「青一色で統一されており、歪んだ円形をしていることで一つの自然物をイメージさせている」のとは対照的だ。
また、古いボトルでは銀色の部分があるが、この銀色が「作り物感」を増幅させ、「ナチュラル感」を減衰させる印象を与えていた。
ブランディングを強化するためには、視覚・触覚、、に関して「消費者に与えたいイメージ」と「実際に商品の造形が与えるイメージ」を一致させるための細かな作り込みが必要となる。
容器メーカーに様々な既成の容器がある中でも、商品に合わせて容器を一からオーダーメイドするような作り込みをしなければ、「消費者に与えたいイメージ」にピッタリと合致するような造形は作れないのではないかと思う。
パッケージ
パッケージに関してもかなりこだわりがあるように感じる。
容器が青だからパッケージも青でいいような気もするが、あえて無着色の(ダンボールのような)箱を使うことで、こちらも「ナチュラル感」をイメージさせる効果をもっている。
「人工的に着色した紙箱」よりも「無着色の、生成りの紙箱」の方が「ナチュラル感」を感じさせるのは至極当然だ。
これは「無印良品」の商品のほとんどが生成りの、無着色の商品であることと類似している。
ロゴ
続いてロゴだが、これは以前のロゴの方が良かったのではないかと思う。
この手書きのようなフォントが「ナチュラル感」を感じさせていた。
まるで「冷たい雪解け水の雫」を感じないだろうか?
手書き風の細かな「歪み」や「滲み」がもたらす「ナチュラル感」や「こだわり感」はPCによるグラフィックデザインでは表現できない。
雪肌精のように自然派志向の製品の場合、「ナチュラル感」を与えるために手書きフォントを用いるのはかなり効果的だと思う。
(森永製菓の「小枝」も類似する特徴的なロゴになっている)
この点、残念ながら新ロゴはデジタル的、グラフィック的で、「人工感」が出てしまっている。
おそらくそれでも「ナチュラル感」を出そうとしている意図は感じられるが、直線部分があまりにも歪みのない直線だったり、滲みがないため、旧ロゴと比較して「作り物感」、「ありきたり感」を感じる。
「味気ない」、「ぬくもりを感じない」というイメージだろうか?
やはり「ナチュラル感」という点に関しては手書きのロゴには敵わない。
「雪肌精」の今後
現在のラインナップを見ると、まだ完全にはボトルなどのイメージの統一ができていないようだ。
今後、こうしたそれぞれのラインナップの間できちんと一貫性のある統一ができればより強いブランドになっていくのではないかと思う。